尿道断裂−2回の入院 [2014年2月5日(水)−2014年6月11日(水)]

尿の出が著しく悪い尿道狭窄と尿の排出を制御できない排尿障碍を診て貰うため、かかりつけの泌尿器科から総合病院に紹介状を書いて貰ったのは、2014年2月のことでした。紹介して貰った総合病院泌尿器科のK医師は性同一性障碍についての智識もあるとのことで、それなら診て貰いやすいと期待して受診しました。海外で性別適合手術を受けて、その手術をした部分の不具合で……という説明を省くことができます。

 

紹介状を見せて自覚症状を説明した後、幾つか検査を受けるよう指示を貰いました。先ず血液検査と尿検査、日を改めてCT検査、IVP検査。IVP検査というのは尿道口から造影剤を入れて膀胱や腎臓への尿の流れを見る検査です。

 

検査の結果、次のような状態になっていることが判りました。形成した尿道と生まれ持ったオリジナルの尿道が、一直線ではなく段差がある状態になっていて、その両者の間には本来あるはずのない空洞ができているのです。

 

 

そして形成した尿道、オリジナルの尿道の両方とも、空洞に繋がる部分が著しく狭くなっています。膀胱から出ようとした尿はオリジナルの尿道の細くなった部分から少しずつ出て、しかし直ぐに形成した尿道に行くことができずに一旦、空洞にたまります。それから形成した尿道の細くなっている部分から少しずつ排出されます。

 

力まないと尿が出ず、ぽたぽたとしか排出されない身体の中はこんなことになっていたのです。

 

これを改善するために内視鏡手術をすることになりました。尿道口から内視鏡を入れ、狭くなっている部分にバルーンカテーテルを通してふくらませて広げ、膀胱までの道を確保します。

 

尿道口からのルートが難しい場合は、恥骨の上3cmの腹壁に穴を開けて膀胱瘻をつくり、そちらから内視鏡を入れて、尿道口からもそれを迎えに行って狭い部分にバルーンカテーテルを入れて開通させます。

 

内視鏡にはガイドワイヤーというものが付いていて、髪の毛1本ほどの空間があればそこを通すことができるそうです。ガイドワイヤーを通して、それに添ってバルーンカテーテルを挿入するのです。

 

この手術を受けるための術前検査として心電図検査と呼吸器検査を受け、異常なしの結果を確認して入院となりました。手術日は3月17日。この日は月曜日のため、一週前の金曜日、3月14日に入院しました。

 

入院から手術までの間は尿量測定以外に特にすることはありませんでした。食事内容の制限も量の制限もありません。手術は全身麻酔で行われました。局所麻酔でもできる手術なのですが、「巧いこと行かなくて、ああでもないこうでもないって言いながらいろいろやってるのが判らない方がいいでしょ?」とK医師。私も寝ている間に終わっている方がいいです。局所麻酔にいい思い出がありませんし。

 

手術当日は1日絶食です。前々日の就寝前には下剤を服み、当日の朝には浣腸をして腸内を空にします。時間が来たら手術着に着替え、眼鏡や腕時計は外し、弾性ストッキングをはきます。その状態で手術室に入り、手術台の上で点滴の針が打たれ、点滴に麻酔剤が注入されると直ぐに眠ってしまいました。

 

手術は1時間半程度で終わるとのことでしたが、実際に手術室に入ってみたら、3時間ほどかかったようです。K医師の予想よりも難しかったらしく、「思っていたよりも大変なことになってたよ」と言っていました。「大変なことになっている」とはどんな状態なのか詳しくは教えて貰っていません。

 

麻酔から覚めると酸素マスクと心電図計が付けられていました。尿道にはカテーテルが通っていて、下腹部が鈍く痛い。麻酔挿管のために喉も少しいがらっぽくなっています。腕には点滴の管が繋がっています。

 

麻酔が覚めて数分もすれば意識もはっきりと覚めて会話ができるようになります。でも酸素マスク越しです。酸素マスクは翌日午前9時頃まで外せません。点滴は当日中に終わりますが、翌日以降も抗生剤などの点滴をしなければならないので針は留置したままです。術後3日間は1日2回、抗生剤の点滴をします。

 

手術当日は絶食ですが、翌日からは食事と服薬がはじまります。抗生剤と炎症止め、痛み止め、胃薬など。痛みがひどいときなどは屯用として座剤が処方されていました。

 

尿道から膀胱にカテーテルが挿入されていて、尿バッグに繋がっています。それ以外に、膀胱瘻にもカテーテルが通っていて、腹部にサージカルテープでとめられていました。K医師曰く「保険」。尿道が巧く治らなくても膀胱瘻から排尿できるように保存しているとのこと。膀胱瘻は毎日消毒しないといけません。

 

月曜日に手術をして、木曜日には退院できます。退院の際には尿バッグは外し、カテーテルにキャップを付けます。尿バッグを付けている間は尿は勝手に尿バッグにたまるので尿意は感じません。バッグを外したら膀胱に尿がたまっていくので尿意が現れます。そのときはキャップを外してカテーテルから排尿します。

 

 

上の写真の黄色いキャップは「カテーテルプラグ」と言って、カテーテルを挿入したら大抵これを付けられるようです。しかし、このキャップは案外不便で、割りと頻繁に自然抜去します。勝手に外れるのです。

 

カテーテルのキャップが外れるとどうなるかと言うと、膀胱の中身が出てきます。カテーテルは下着の腰ゴムに挟んでおいたりするので、そこから膀胱の中身が洩れ出してくると下着は勿論、ズボンやシャツの裾まで濡らしてしまいます。

 

自然抜去するたびに着ているものを着替えなければならないのは厄介です。また頻繁に自然抜去する割りに、排尿のために外そうとすると外れにくくて面倒です。

 

できればDIBキャップを付けて貰った方がいいでしょう。DIBキャップは自然抜去しづらく、磁石でとまる開閉蓋が付いていて排尿も楽です。

 

 

これがDIBキャップです。カテーテルに装着するとこんな感じです。

 

 

カテーテルプラグは自然抜去して生活に著しく支障が出ると医師に訴えればDIBキャップに換えて貰えると思いますが、換えて貰えなかった場合は通信販売等を利用して自分で買ってしまうという手もあります。だいたい1個1080円くらいで売っています。

 

週に1回、受診をして膀胱及び膀胱瘻の掃除や消毒をして貰いました。術後3週間で尿道カテーテルは抜去されました。膀胱瘻のカテーテルはまだ「保険」として置いておきます。

 

尿道カテーテルが取れたら、自分の泌尿器から自然排尿することになります。術後はじめて自然排尿したとき、とても尿線が太くて驚きました。自分の身体からこんなに太い尿が出るなんて、と。

 

尿道カテーテルを抜いた1週間後、膀胱カテーテルも抜去しました。身体に5mmほどの穴が残りましたが、それは放置です。私もちょっと驚きましたが、これは勝手に治癒して塞がります。

 

尿道カテーテルが外れてから2週間は機嫌よく排尿できていました。しかし3週め辺りから何だか尿線が細くなってきて、かかりつけ医に相談したところ、少しは組織が萎縮して尿道も細くなることがあるから様子を見るようにと言われました。

 

しかし、尿の出は次第に悪くなってきて、またぽたぽたと滴でしか出なくなってきました。

 

また紹介状を書いて貰い、総合病院へ行くことになりました。逆戻りです。

 

5月23日(金)再入院、5月26日(月)再手術です。3月と同じ手術をすることになりました。これで駄目なら、会陰部を切開して尿道を形成し直す必要があるとのこと。

 

3月入院時と同じ手順を踏んで同じ手術を受けました。同じように麻酔から覚めましたが、尿道にはカテーテルは通っておらず、膀胱瘻に挿さったカテーテルに尿バッグが繋がっています。

 

術後説明に来てくれたK医師によると、「狭窄部が狭くなりすぎてガイドワイヤーが通らなかった」。髪の毛1本ほどの隙間があれば通せるガイドワイヤーが通らなかったのです。尿が出にくいはずです。尿道は狭窄しているどころか、断裂していたのです。

 

これで切開手術が確定しました。K医師曰く「尿道断裂の手術は当院でもできる。しかし、ネイティヴ男性なら膀胱まで断裂した尿道を引っ張っていってやればくっつくけれど、形成した尿道が同じ方法でくっつくかどうか判らない。性別適合手術に詳しい医師に相談して手術をお願いした方がいいだろう。伝を頼って適任の医師を探します」とのこと。

 

これが2014年6月11日現在の状態です。

 


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